ある日、突然。

悪性高血圧と、それに伴う心不全・腎不全・網膜症・脳梗塞など。現在も続く治療のあれこれとその周辺を記録するブログです。

緊急入院。

紹介された総合病院は都心の大規模病院で
病院にまったく興味のない私でも名前は知っているところだ。


改めて総合病院で受付をすませると、私は循環器内科へと向かった。


生まれてこの方、
街の小さなクリニックくらいしかかかったことのない私が、
総合病院、しかも循環器内科に来ることになるとは。


まったく縁のなかった場所。


現実感が非常に薄かった。


受付で少し待つと緊急処置室に呼ばれ、
そこで検査着に着替え、ベッドに横になるよう指示された。


血圧・採血など、再び検査が始まった。


少し広めの室内には、若い医師や看護師らしき人が何人もいて、
たむろしながら話をしたり、何か機械をのぞき込んだりしている。
私が運んできたと思しきCT画像を見ている人もいる。


1対1で対面する診察室と比べると、何か少しラフな雰囲気だ。


医師がときどき私のところに来ては、これまでの症状を確認し、
私は内科医院で説明したことを思い出しながら、もう一度繰り返す。


そうこうしているうちにも、昼間の内科医院から、
私の今日の血液検査の結果などが直接送られてきているらしく、
「今、とったのとほとんど同じだな。」といった会話が漏れ聞こえてくる。


内科医院でも総合病院でも、その日検査した内容について、
具体的なことはまだ何ひとつ説明されてはいなかったが
伝わってくる雰囲気や、漏れ聞こえる会話からは、
何かあまりよくなさそうだな、ということだけが察せられた。


しばらくすると、自分と同年代、40代くらいの医師が来て、
「入院したほうがいいけど、大丈夫ですか。」と話しだした。


ただ、聞いていると、
週末近いので、今日、入院しても検査がすぐできないとか、
週末は寝ているだけになるとか、話がどうも煮え切らない。
しかもなぜか、心なしか迷惑そうにしているように見える。


そもそも入院するかどうか、私が自分で決められるのか?
必要ないと私が思えば、それでもよいのか?
ではなぜ今、自分は入院を勧められたのか?


まったくわからない。


じゃあいったん家に帰って準備して、週明けに出直すのでもいいですか。


そう聞いてみると、そういうわけでもないらしい。


なにかはっきりしない。


病院に検査に行って入院。そのまま帰ってこなかった。
いやそれは、やっと病院に行ったと安堵しているはずの
家族や職場の皆を驚かせるだけである。
いったん帰宅し、自分の口から直接、状況をマイルドに説明する。
そのうえで入院・治療できるなら、そのほうがよいに決まっている。


このお医者さんはなぜ迷惑そうなんだろうか。
忙しいところに、夕方、突然飛び込みの患者が舞い込んだから?
いやいや準備が間に合わないから?
それとも入院用のベッドがいっぱいで埋まっているとか???
何か入院を嫌がってる、と思われてるようなふしも感じる。


自分が現在どういう状況におかれ、医師たちにどのように見られているのか。


慣れない場所で、医者という異文化の人たちの反応を読みとるには
ふつうの健診ですら避けてきた自分には、あまりに経験が不足していた。


また、朝には想定もしていなかった展開に、混乱もしていた。


いろいろ逡巡し、どう答えたものかと口ごもっていると、
別の年輩の医師に、「入院したほうがいいよ」と
それ以外の選択肢を与えない諭すような口調で、再び入院を促された。


「わかりました。」


私がそう答えると、やっとその場の空気が少し緩んだ気がした。


「じゃあ、入院の部屋の準備ができたら呼びに来るから、
そこのベッドで休んで待ってて。」


とりあえずの方向性が決まって嬉しかったのか、
そういうと、若い医師は軽い足取りで消えた。


私はといえば、職場や内科医院、自宅へ順に電話をかけさせてもらうと
準備ができるのをぼんやり待っていた。


そうして待っている間にも、いかにも大学を出たばかりという雰囲気の
研修医らしきらしき人たちが、ものめずらしそうに私のところに来ては
「ピンクの痰は出ましたか」とか、嬉しそうに聞いてくる。


嬉しそうに、というと語弊があるな。
好奇心にあふれた様子で、というべきだろうか?


私はなんだか動物園のパンダにでもなったような気持ちで、
次に呼ばれるのを待った。

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