ある日、突然。

悪性高血圧と、それに伴う心不全・腎不全・網膜症・脳梗塞など。現在も続く治療のあれこれとその周辺を記録するブログです。

腎臓は替えがきく。

「腎臓の状態もあまりよくないから、ある程度腎臓にも気を遣うけど、
 いざとなったら心臓を優先するから。腎臓は替えがきくからね。」


入院してわりとすぐに主治医に言われて、衝撃を受けた言葉のひとつである。


入院すると、病状と今後の治療方針を説明される。


入院前に検査したり、治療方針をたてたりといった
前振りがあるときはまた違うだろうが、
私の場合、緊急入院という形で病院に入った。


そして入ったときにはすでに心不全を起こしており、
他の臓器障害は進み、急性のものもそうでないないものも
とにかく悪いところだらけだった。


入院するとすぐに病状説明があり、今後の治療方針が説明されるが、
緊急で入った私には過去治療の前歴等がまるでない。


したがって検査しながら、同時に治療を進めることになる。


しかも病状は刻々と変化する。


通常であればひとつひとつ事前説明を受けて治療を進めるところ
なのだろうが、そんなことをしていると間に合わなくなるので、
そういったところはすっとばし、
ある程度、医師の裁量におまかせして進めてもらうことになる。


で、最初の言葉につながるわけである。


入院時、とくに状態がよろしくなかったのが心臓だった。


心臓が弱り、体の血液の循環が悪くなると、
心臓に関連の深い臓器も影響を受けて徐々に働きが悪くなってくる。


心臓と非常に近しい関係にあると言われるのが腎臓だ。


実際、私も腎機能はかなり落ちていて、
入院時のeGFR(換算糸球体濾過率)は14。
日によって上がり下がりもあり、
急性の腎機能障害を起こしていると考えられた。


「eGFR15以下」は、一般的なCKD診断基準ではステージ5。
末期腎不全に足を踏み入れたところであり、
透析も視野に入れる必要が出てくる状態である。


一般社団法人日本腎臓学会 |  CKD関連
https://www.jsn.or.jp/ckd/pdf/CKD01.pdf


そして、そんな状態ではあるが、
ある程度臓器に負担をかけないと治療のための検査が進まない。


検査が進まなければ、治療ができない。


病状や原因を調べるための検査には、
造影剤を使用したり放射線を浴びたり、体や臓器に負担をかけるものも多いのだ。


万一の場合、弱った腎臓は機能を失い、一気に透析になる可能性がある。
ただ、治療できなければいずれ心臓は止まる。
たとえ他の臓器がなくなってしまっても、ほかに手段はある。
心臓が助かれば、少なくとも命はつなげる。
心臓が止まってしまえば、腎臓が助かっても何の意味もない。


「腎臓は替えがきく」とは、そういうことだ。


ある意味、究極の選択である。


命あっての物種。当たり前だ。


ただ、理屈は頭で理解しても、
ふだんから、自分の内臓は替えがきくものかどうかなんて
考えながら生活している人は、そうはいないだろう。


私自身もついさっきまで、外でふつうに生活していたのだ。


そして突然、目の前にそういう選択を突き付けられた。


いやいやいや、そんな簡単に替えられちゃっていいんだっけ???


私は、心不全とわかってから何度目かの途方に暮れた。
ドラマや小説にでも出てきそうな話が、
自分自身のこととして、目の前に提示されている。


まるで現実感がなかった。


そして、毎日、当たり前のように、
そんな選択をしながら生活しなければならない
お医者さんという人たちは、同じ日本に住んでいても、
自分とはまったく異なる文化圏の人たちであり。


生活や価値感が変わりそうだな、とぼんやり考えていた。

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