吐き気、ピンクの泡。
5月に入ると、調子はますます落ちてきていた。
夜まで体調が保たなくなったこともあり、
仕事を少し早めに切り上げ帰宅するのだが、帰宅途上の車中で気分が悪くなる。
会社から家まで、タクシーに乗っているのは20分程度だ。
はじめのうちは、歩いて少し調子が悪くなっても、
タクシーに乗って座り、息を整えて休むうちに調子が回復した。
それがやがて座っても調子が回復せず、かえって胸の苦しさが増すようになった。
座ってもしばらく胸が圧迫されたように息が苦しく、しゃべることが難しい。
全速力で走った後、苦しくて前かがみになり、
とにかく息を整えることに集中している感じに近いだろうか。
息をするか、しゃべるか。
ひとつの動作だけで精一杯で、同時にはできない。
不審に思われる前に運転手に行き先を伝えなければ、
と息を止め、ひと息に行き先を告げる。
そしてできるだけ楽な姿勢で座席におさまる。
乗車直後はとにかく必死だった。
また、車のエンジンの振動を感じていると気持ちが悪くなり、
タクシーに乗ると乗り物酔いのように、胃がムカムカするようになっていた。
車から降りるまではと、
のどにせり上がってくる吐き気を必死に抑えるのだが、
降りたとたんに吐き気がこみあげてきて、道路脇で吐くことが何度もあった。
5月半ばを過ぎるころには日常的に食欲がなく、
胃は空っぽのことが多かったが、そんな時でも吐き気はおさまらなかった。
そんな時、吐くものがなくなると黄色っぽい胃液だけを戻すようになった。
やがてそこに淡いピンク色の泡が混じるようになっていた。