ある日、突然。

悪性高血圧と、それに伴う心不全・腎不全・網膜症・脳梗塞など。現在も続く治療のあれこれとその周辺を記録するブログです。

咳が止まらない。

メニエール病のほかに持病として、幼いころからアレルギー体質があり、
アトピー性皮膚炎で顔半分を腫らしたことや喘息と診断されたこともある。


少し体調の異変を感じていた2016年初頭も、咳がずっと続いていた。


最初は風邪を引いたかな、と思った。


自分の呼吸器があまり強くないという自覚はある。
風邪か喘息か、はたまた過労で免疫が落ちたのか。
喘息は曲者である。


常に胸の奥をチクチク刺激されるような、かゆいような、
妙な落ち着かない感覚があり、何か月たっても咳がおさまらない。
アレルギーで気管が腫れてるような違和感も感じる。


しゃべると空気が胸の奥をチクチク刺激して、よく咳を誘発した。


少し悩んだものの、咳がずっとおさまらないというほかは、
痰が絡んで喉が痛かったり、眠れないほどひどい咳がでるわけでもなく
咳そのものはケホケホと軽い感じであったため、
もう少しすればおさまるかも、いやでも病院に行ったほうがいいかも、
市販の携帯用加湿吸入器で喉ケアしてみたり、としばらく逡巡した。


同じ時期、とにかく歩けないこと、なんとか移動しなくては、
ということに気を取られていたせいもあるだろう。


そしてやはり数か月も咳が続くのはおかしいかもしれない、
と病院に行ったときには5月になっていた。


この時行った病院は、会社近くの街の内科クリニック。
ずいぶん前だが、喘息の薬をもらいに通ったことが数回ある。


担当は女医さんで、循環器専門医らしかった。


問診と聴診器での診察があり
カルテと既往歴を見て「喘息の再発かな」と言うと、
吸入ステロイド薬のアドエアとホクナリンテープを処方した。


だが結果から言うと、薬は効かなかった。


咳の原因は、風邪でも喘息でもなかったのだ。


結局、6月に入院するまで咳は続くことになった。

歩けない。

年末の具合の悪さはいったん持ち直したものの
体調の悪さはずっと続いていた。


翌年1月に入ると、朝、歩くと息が詰まって動けなくなる日が出てきた。


毎朝、9時前には会社に出かける。


自宅はマンションの7階だ。
自宅を出ると、家の前の廊下を歩いてエレベーターに乗り、
下階に降りてマンション前の大通りに出る。
大通りを10分程度歩くと駅に到着するので、
そこから電車とバスを乗り継いで30分くらい。
さらにバス停から15分程度歩くと会社の入口に着く。


会社は交通の不便な都会の住宅街の真ん中にあり、
移動は電車やバスに乗るよりも、歩いている時間のほうが比較的長いのだ。


最初は、マンション玄関を出たあたりで胸が詰まって体が動かなくなった。


息切れというようなものではない。体が動くことを拒否していた。


少し休むとまた動けるようになるので、少し歩く。また止まる。


数メートル先の目標物を決め、そこまで歩けばいったん止まって休んでも
他の通行人に悪目立ちしないだろう、などと目算を立てながら
とにかく目的の場所まで歩ききることだけを考えた。


そんなことを何度も繰り返すと、自宅前の大通りまで辿りつく。


そうすると一番の難関はこの大通りだ。


6車線ある非常に大きな通りで、
この通りを渡るとバスやタクシーの乗り場があるので、
出かけるなら最低限、ここの横断歩道だけは渡らなければならない。


ところが、横断歩道が青信号のうちに渡りきることが難しかった。


青に変わってすぐに渡り始めないと途中で信号が変わってしまうので、
信号が変わるタイミングに合わせて、息を止めて必死に歩く。


現在、普通に歩いても信号途中からでも難なく渡りきれることを考えると、
当時、自身はふつうに歩けると見せかけるために必死であったが、
歩くスピード自体、相当に遅くなっていたのだろう。


またそんな状態だったので、歩いて通勤はとても無理、と即座に判断。
この際お金は度外視だと、タクシーを利用することにした。


今考えると、何をそんなに必死になっていたのかと思うところもあるが、
当時は生活の中の大事な部分を仕事が占めていた。


これによって、とにかく大通りまで出てしまえば通勤自体は何とかできる、
という目算を得た。


ただ1回に歩ける距離は、日を追うにしたがってだんだんと短くなっていった。


最初はマンションの玄関外まで歩けていたものが、
エレベーターを降りたところまでになり、
エレベーターホール前までになり、やがて自宅の玄関まで、といった具合に。

2015年年末。

思い返してみて、一番最初に感じた明らかな変調は2015年12月年末。


新年まであと少しの頃だった。


その日は休日で会社は休みだったが、休日出勤の予定があり、
いつも通り、朝、目が覚めると起きようとしたが、文字通り起き上がれなかった。


壁に手をつき体を身体を支えながら、かろうじてベッドから立ち上がったものの、
胸から上が石のように重く、上半身がまっすぐ起こせない。


なんとか着替えだけでもと思うのだが、壁で体を支えた半端な体勢のまま、
体を起こすことも動くこともままならない。


痛みや苦しさはなかったと思う。ただ、動けなかった。


あと無理に動こうとすると恐ろしく気分が悪くなった。


実はこの時私がまず考えたのは、持病のメニエール病のことだった。


メニエールには10代のころに初めて罹患し、
突然、歩くことのできないほどひどい回転性めまいと激しい嘔吐に
襲われたことが数回ある。



治った後も、過労やストレスが続くとめまいや吐き気となって出やすく、
この日も連続勤務で少し疲れているかもという自覚はあったため、
いつもの発作が少しひどい感じなのかもしれない、と考えた。


メニエールの場合、少しすれば症状は落ち着いてくるので、
とにかく症状が落ち着くまでおとなしくじっとしているしかない。


ベッド脇にもたれた楽な姿勢で座っていると
やがて少し動けるようになってきたので、
予定より1時間くらい遅れて、その日は勤務に出かけた。